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河合英嗣パーソナル・インタビュー【第4回】ライブ作りへの意識を変えてくれた「キンスパ」

全4回に分けて掲載中の、弊社所属の河合英嗣へのパーソナル・インタビュー。そのラストとなる今回は、ギタリストとしての考えやライブのサウンドプロデュースにまつわる話題からスタート。また、彼が作家として今挑戦したいと思っていることも、最後に率直に語ってくれました

――インタビュー第4回は、ギタリストとしてのお話からお聞きしていきます。河合さんはレコーディングでギターとしても楽曲に参加されていますが、プレイヤーとして大事にされていることはどんなことですか?

河合 僕はセッションでやっていくタイプのギタリストではないので、レコーディングのときは曲の一部として構築することを考えています。だからなのかもしれないんですけど、僕はあまり「ギタリストっぽいギターじゃない」と言われることが多いんですけど……。

――ソロの部分をものすごく立たせてやろう、というスタンスではないという感じというか。

河合 そうですね。昔、ヤマハで講師をやっていたことがあるんですけど、最初の研修で「河合くんの、ギタリストとしてのルーツが見えない」と言われたことがありまして……「別にそんなもの、いらないんじゃない?」みたいに思っていたんですけどね(笑)。好きなものがいっぱいあって、特定のルーツがないのが僕かなという気はしています。そこに悩んだ時期もありましたけど、最近はそういった気持ちで弾いています。

――その心がけは、前回アレンジの際に大事にされているとおっしゃったこととすごく結びつきますね。

河合 たしかに、まず第一に「エゴで弾きたくないな」という気持ちはあるかもしれません。結構「俺にパス回せ」みたいなギタリストを見ることもあったんですけど(笑)、そういうタイプでは決してないですね。

――さらに河合さんは、ライブのサウンドプロデュースも手掛けられています。様々なワンマンライブに加え、2015年と2018年の“KING SUPER LIVE(以下:キンスパ)”も担当されました。アーティスト数の多いフェス形式だと、ワンマンライブとは気をつけるべきポイントが違うのでは?

河合 全っ然違いますね。たとえば、2018年は台湾・上海もあったから、日替わり曲も含めて50曲ぐらいやったのかな? しかも、ジャンルもすごく幅広いし……でも“1曲”って僕らにとっては1/50かもしれないけど、1曲しかないアーティストさんもいらっしゃるじゃないですか? その勝負の1曲をムダにしちゃ、絶対ダメなんですよ。当然ワンマンライブでもそうではあるんですけど、フェスでは1曲1曲をないがしろにしちゃいけないと、普段以上に思うんですよね。あと、こういうフェスには皆さん大切な1曲を持ってこられているはずなので、僕らの考えだけで勝手にアレンジしてもいけない。逆に完コピじゃないですけど、できるだけイメージに沿った形にすることは、心がけるようになりました。

――キンスパ後には、ライブ作りへの意識みたいなものもやはり変わったのでしょうか。

河合 まったく変わりましたね。アニメのOP曲や各アーティストのメイン曲って、特に難解なものが多くて(笑)。それを弾くにあたって、バンマスとしてはまず「譜面はちゃんとしなきゃな」というのが絶対的にあるなと思ったんです。各パートのバンドメンバーがアンサンブルするときの共通言語って、やっぱり譜面になるんですよ。だからその共通言語がないまま話していても進まないし、膨大な曲数を短期間で仕上げなきゃいけないというなかでは、特にムダな時間なんです。なので、ミュージシャンの方々に最低限度やりづらさを感じさせない現場にしたいな……ということが、まず第一に浮かぶようになりました。なので見やすい譜面・見にくい譜面というものも、勉強させてもらいましたね。

――たしかに、50曲となると説明の時間も膨大になってしまいますよね。

河合 そうなんですよ。みんながそれぞれ何を弾いているのか紐解く時間もないし、逆にたたき台があれば話が早くなるので、そのぶん「もっとこうしよう」という話をより楽に進められるんです。それに2018年のキンスパは台湾・上海もあったので、ちょっとしたツアー感覚があって。なので、たとえば宮野(真守)くんとかとも「もっとこうしよう」みたいな話もできたり、一緒にライブを構築できているような感覚もありました。

――こうして4回にわたってお話をお聞きすると、本当に河合さんが携わられているものが多岐にわたることがわかります。そんななかで、今後やってみたいことや目標にされたいことについても、最後にお話しいただけますか?

河合 やっぱり「ひとつのアーティストをプロデュースしたいな」というのはありますね。それは声優アーティストでもアイドルでも、相手を特に決めてるわけではないんですけど。最近はアルバムの中の1曲を担当させてもらうようなことはあるんですけど、やっぱりプロデュースを任せてもらえないとアルバム全体を流れとして作ることはできないので、そういうものはチャレンジしてみたいですね。

――相手の方に応じて、作りたい世界観が変化したり、決まっていったりするでしょうし。

河合 そうですね。すっごいアコースティックなものなのかもしれないですし、逆にすっごい打ち込みバリバリな曲になるかもしれないし……お互いイメージできるものがしっくりくれば、腰を据えて取り組んでみたいです。

――そういうことって、具体的にどなたかにお話しされたりは?

河合 まだまったくしてないです(笑)。機会があればと勝手に思っているだけで、特にレーベルさんに何かを持ちかけたりはしていないんですけど……なので今後は、ちゃんと売り込んでいきたいですね(笑)。

Profile

河合英嗣(かわいえいじ)。地元金沢で結成したVo&ギターユニット「BIIR(ビーツーアール)」で98年東芝EMIよりデビュー。 解散後、作詞・作編曲のコンポーザー活動を中心に、ギターリストとしてREC、LIVEと幅広く活動中。ROCK、ヘビメタなどのダンスミュージックなど様々な楽曲をPOPでスタイリッシュに作り上げる。

インタビュアーProfile

須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。
Twitter:@sunaken

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