全4回に分けて掲載中の、弊社所属の河合英嗣へのパーソナル・インタビュー。第3回となる今回は、タッグを組む機会の多かった声優アーティスト・喜多村英梨さんとの制作秘話や、河合がアレンジを手掛ける際に大事にしていることを中心に語ってもらいました。
――第3回は、作家活動されていくなかでアレンジやギターなどでタッグを組まれる機会の多かった、喜多村英梨さんとの楽曲についてのお話からお聞きできますでしょうか。
河合 喜多村さんとは「Be Starters!」から一緒にやらせていただいて、「Happy Girl」もできて……その後1stアルバムを作るにあたって、うちの山口朗彦と山崎寛子と僕とで打ち合わせに行ったんですよ。そのとき「バンドサウンドにしたい」という希望がありまして。そうしたらその帰りに、山口くんと山崎さんから「バンドはもう、河合さんにお任せします」と(笑)。当然ふたりも曲は書くんですけど、アレンジの部分では「よっしゃ、任しとけ!」みたいな話をして、帰った記憶がありますね。
――喜多村さんご自身がロックやメタルが大好きだと思うので、特にこだわりも多かったのでは?
河合 発注の時点から、こだわりは強かった覚えがあります(笑)。僕らも知らないようなバンドを山ほど例に出したうえで「こういう曲がほしい」みたいなことを積極的に言ってくれたりしたので、それを噛み砕きながら作った『RE;STORY』というアルバムはもう、こだわりの塊ですね。僕としても「声優アーティストのアルバムだけれども、他にはないようなものにしていきたいな」と、こだわっていきました。
――その『RE;STORY』の中では、リード曲の「re;story」を山崎さんが詞曲とアレンジを手掛けられています。以前山崎さんにお話をお聞きしたときに「先輩の力もお借りしながら」とおっしゃっていたので、一緒にアレンジに入られた河合さんがどういう助言などをされたのかがとても気になっているのですが。
河合 「re;story」はまず、ベーシックな部分やピアノのところを彼女が作ったうえで、僕がバンド経験を活かしてドラムやベースという楽器隊の部分を構築していって……という感じだった覚えがあります。それに喜多村さんの意向もあって『RE;STORY』ぐらいからメタル色も要求されるようになりまして。そこで「餅は餅屋」じゃないけど、メタルとか速弾きってやっぱり専門職だと思うので、より本物っぽくなるようにGALNERYUSのSyuくんにお願いしてギターを弾いてもらったりもしていました。たしかあれが、自分がアレンジした曲で初めて人に弾いてもらった曲だったかな? より本格的な曲にしたかったので、そこもこだわらせていただきましたね。
――その一方で、最近河合さんがアレンジを担当される曲には打ち込みやデジタルの色合いの強いものも多いように思います。こうして幅広いジャンルのアレンジを手掛けられるなかで、河合さんが特に大事にされていることとは?
河合 元々BIIRのときから、デジロックを基本にしながらサウンドの幅は広かったという自負があるので、自分自身のことを割と実像がないところもあるように思っているんですよ。しかも、お仕事をさせていただく楽曲のジャンルも本当に多岐にわたるので、あまり自分の音みたいなものは意識しないように。その楽曲のおいしいところを見つけて、そこをどう引き立たせるか……を考えるようにはしています。それに、曲と向き合っていれば嫌でも自分の音になるので、その楽曲にとって本当にいいところを活かすということはこだわりとして持つようにはしています。
――それを最大限膨らませたいというところが、河合さんのこだわり。
河合 そうですね。なのでなるべく「ゴールがここだ」ということも、あらかじめ思い浮かべるようにしています。自分の曲なら構築していくうちに「あっ、こうなっちゃった」ということがあっても別にいいかもしれないですけど、発注を受けた時点で絶対イメージってあると思うので、ちゃんとそれを見失わずに着地できるようにはしたいですね。
インタビュー最終回となる第4回は、ギタリストとしてのレコーディングへの参加や“キンスパ”をはじめとするライブのサウンドプロデュース、そして今後河合が挑戦したいことについて語ってもらっています。次回もどうぞ、お楽しみに!
Profile
河合英嗣(かわいえいじ)。地元金沢で結成したVo&ギターユニット「BIIR(ビーツーアール)」で98年東芝EMIよりデビュー。 解散後、作詞・作編曲のコンポーザー活動を中心に、ギターリストとしてREC、LIVEと幅広く活動中。ROCK、ヘビメタなどのダンスミュージックなど様々な楽曲をPOPでスタイリッシュに作り上げる。
インタビュアーProfile
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。
Twitter:@sunaken