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Motokiyoパーソナル・インタビュー【第3回】経験が可能にした“視覚”も生かした作曲法

全4回に分けて掲載中の、弊社所属のMotokiyoへのパーソナル・インタビュー。第3回となる今回は、プロデビューを果たしPOPHOLICへ所属してからのエピソードを中心にご紹介。デビュー後の迷いも率直に吐露しつつ、その迷いがあったからこそより確固たるものにできた、専門学校在学中から続けている独自の作曲法などについて語ってもらいました。

――第3回目は、POPHOLICに所属されてからのお話を中心にお聞きします。所属が決まってから最初に手掛けられた曲は、何だったのでしょう?

Motokiyo POPHOLICの先輩作家の坂詰美紗子さんが作曲されたCrystal Kayさんの「Lovin’ You」に、共同編曲として参加させていただいたのが最初でした。一人で手がけた作品ですと、『フューチャーカード バディファイトX』の「Brave Soul Fight!」が最初だったと思います。

――深夜アニメだった『三者三葉』とは違って朝放送のアニメという点は、制作の際に意識されましたか?

Motokiyo それが、あまり“子供向けアニメ”という意識がなかったんですよね(笑)。でも「わかりやすいメロディのほうがいいな」という考えはありましたし、男女デュエット曲だったので「どっちの主旋律も独立しているような曲にしたいな」ということも考えていました。それに、どんな作品で主題歌を書くときにもその曲が実際テレビで流れているときの絵面をなんとなく想像はするので、そこにハマりがいいような曲にしようという意識もありました。

――楽曲制作の際に、映像のイメージも膨らませるんですね。

Motokiyo そうです。OPやEDになる曲って、絵がつくものじゃないですか?だから、楽曲制作の段階でどんな絵がつくのかを自分自身で想像できないのは怖いので、作りながら目をつぶって聴いてみて、そのなかでなんとなく自分で勝手に映像のイメージをして、浮かべばそのまま提出しますし、逆にブラッシュアップのために調整することもあります。

――実際のOPやED映像は、そのイメージに近いものになるんでしょうか?

Motokiyo いや、全然違うことのほうが多いです(笑)。あくまで作る段階でのイメージなので。自分のイメージと違う形になった時は自分以外の視点というか感覚の違いが面白くて「なるほど」ってなります。ただ、年々自分が書いた曲のオンエア自体、繰り返し観ないようにしている気がします(笑)。自分が書いた曲が歌われるライブにご招待いただいたときもそうなのですが「受け入れてもらえるだろうか?」とか変に考えちゃって、胸がきゅーっとなるんです。そういうところがあるから、自分の手を離れた曲にまつわることがらに対して少し避け気味で、例えばエゴサとかも年々しないようになっていっているんですよね。

――ネガティブな反応が100個中1個だけだったとしても、その1個に引っ張られてしまいますもんね。

Motokiyo そうですね。特に何かがあったわけではないんですけど(笑)、良い反応でも悪い反応でも情報量が多くて、変に自分の中で干渉してしまうと曲を作っているときに余計な遠慮とか欲が出てしまいそうなので。

――それによって、Motokiyoさんらしさが失われてしまうかもしれないですし。

Motokiyo そうですね。スポーツ選手が色々取り込もうとしてフォームを崩してしまうような感じを避けたいのに近い気がします。その分逆に、マネージャーさんや作家仲間みたいに自分の今までの癖というか特徴を把握したうえで聴いてくれている方の声にある程度絞るようになりました。実際に、1回ちょっと崩したこともあったので……。

――そうなんですか?

Motokiyo 例えば最近だと一線で活躍されている音楽作家さんで、デモ曲やその制作過程を公開されている方も結構いらっしゃると思うのですが、それ自体がとても濃密で情報量も多い分、自分にないものを無理やり取り入れようとして、自分が元々持っていたやり方が崩れてしまったことがあったんです。そういったことを経験してから、取り入れるものを選ぶようになったような気がします。

――ということは逆に、その時期以外は変わらず大事にされていることもあるわけですね。

Motokiyo はい。それは、曲を絵面で見るということなんですけど。

――曲なのに、絵面で見るんですか?

Motokiyo そうなんです。中学生の頃に『バンドブラザーズ』で曲を書き始めたというのもあってか、メロディをピアノロール上の並び方の形でなんとなく覚えていて。きっかけはMr.Childrenやスピッツの曲を耳コピするなかで、2拍3連的な音の並びが良く出てくるなと思ったことなんですが、それ以降音の配置を視覚でも意識するようになりました。サビでオクターブ跳躍する形だったり、同音連打する形だったり、ベースラインとの位置関係だったり、ひとつのメロディを作り上げる縦横のパーツがテトリスのブロックパターンみたいに、自分の中に蓄積されていった感じです。もちろんそれが全てというわけではないと思いますし、音楽の世界では珍しくないことなのかもしれませんが、その捉え方と自分なりの解釈を無視しないように、曲を書くようにしています。ただ、そのせいか鼻歌とか歌いながら曲を流れで書くのが苦手です。

――そういう作曲法に落ち着いた、決め手のようなものはあったのでしょうか。

Motokiyo これも、田中秀和さんの楽曲に衝撃を受けた影響かもしれないです。田中さんの曲のコードワークと言うんでしょうか?その技術的なものの深さを感じたとき、「自分の中で、何かひとつスタンスというか軸を決めておこう」と思って、自分にとってのルーツになったやり方を今も続けています。

――すごいですね。音を視覚的に書く……。

Motokiyo はい。もちろん「聴いて気持ちいい」という感覚も持ちながら、それには頼りすぎず。お風呂やトイレみたいな場所でリラックスしているからこそ浮かぶフレーズもありますけど、それが本当に“いい”かどうかは、トラックを立てて打ち込んでみてから判断します。

――必ず1回画面に起こす。

Motokiyo そうですね。もちろん全く同じメロディではないんですけど、音価やインターバルとかを見て、今まで自分がいいと思った型との共通点があるかどうかを見出すんです。

――そうすることで、浮かんだアイデアを客観視できるようになるというか。

Motokiyo そうなんです。これってきっと、楽曲を譜面に起こすのと同じ種類の作業だと思うんですよね。やっぱりいい曲の譜面って、音が全部意図を持って配置されていることが伝わるぐらい、譜面の時点でもう美しいと思うんです。そういう見た目的な気持ちよさと、自分自身の感覚や好みをかけ合わせながら、曲を作っているのかもしれません。

インタビュー最終回となる第4回は、ある大物音楽家がきっかけになったという作詞におけるターニングポイントに迫ります。また最後には、今後Motokiyoが挑戦したいことについても語ってもらっています。次回もどうぞ、お楽しみに!

Profile

Motokiyo。キャッチーで綺麗なメロディーと、品のなる「キラッ」としたアレンジを得意とする。自身もJPOP,アニメソングを好んで聴いている。中学3年生の時、ギターに初めて触れ、その後、独学で作曲、作詞をするようになり、高校1年生の時、ベース担当としてバンド活動。この頃からDAWを用いた楽曲制作を行うようになる。日本工学院専門学校芸術専攻課程ミュージックアーティスト科で音楽理論 を学び、2016年3月に卒業。在学中に作曲をしたTVアニメ「三者三葉」のED曲「ぐーちょきパレード」が採用され作家デビュー。同年9月にはオトナの土ドラ『ノンママ白書』の主題歌でCrystal Kayが歌う「Lovin’ You」を共同編曲を担当して、着実にキャリアを積み上げている。

インタビュアーProfile

須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。
Twitter:@sunaken

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