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Motokiyoパーソナル・インタビュー【第4回】周囲の評価が自信をくれた考え抜いて生み出した作詞スタイルとは

全4回に分けて掲載中の、弊社所属のMotokiyoへのパーソナル・インタビュー。そのラストとなる今回は、自身の作詞における試行錯誤や転機を深掘り。さらに締めくくりとして、今後の音楽作家としての目標についても、率直に語ってもらいました。

――インタビューも最終回。今回はまず、音楽作家として活動を始めてからのターニングポイントからお聞かせいただきたいのですが。

Motokiyo ターニングポイントは……『キラキラ☆プリキュアアラモード』の「勇気が君を待ってる」という挿入歌だと思います。この曲は、歌詞について現場でディレクターさんにポジティブな感想を言っていただけたことが、とても嬉しかったといいますか……それまでは、作詞について自信がなかったんですよ。

――どちらかと言えば、苦手意識のようなものが。

Motokiyo はい。「ぐーちょきパレード」の前田甘露さんの歌詞がすごく好きだったので、甘露さんに作詞について質問したこともあったぐらいです。でもやっぱり、その作詞家さんならではの感覚を生かした方法を自分が取り入れることって、なかなか難しくて。それができないことで意気消沈した時期もあったんです。でも、そのディレクターさんの感想を通じて、勝手ながら「大丈夫だ」と背中を押していただけたような気がしまして。それ以降は作曲と同じように、作詞でも自分なりのスタンスみたいなものを持つことができるようになりました。

――そのスタンスは、どのようなものなのでしょうか。

Motokiyo 音ノリというか、言葉自体が持つ濁音や破裂音といった音の強弱を、アーティキュレーション感覚でメロディの形や強弱拍にあわせて書く意識といいますか。きっかけは、『プリキュア』の楽曲の歌詞を書くにあたって、過去の『プリキュア』楽曲の歌詞を調べていたときに、畑亜貴さんについて研究したとあるサイトを見つけたことで。そこでは歌詞に使われる言葉を抽出して、共通語を見出していたんです。そういうものを見て、田中秀和さんを知ったときと似た衝撃というか。作詞も作曲と同じように、自分なりの解釈や捉え方をしてもいいのかもしれないと思うことができたんです。

――ということは、この曲の歌詞は『プリキュア』シリーズの過去の歌詞を分析したうえで書かれた。

Motokiyo はい。『プリキュア』シリーズでは“心”や“勇気”を歌うような言葉が多かったので、あくまで傾向だということを念頭に置きつつ、タイトルを含めて意図して組み入れるようにしてみました。歌詞の音ノリも、似た形の音の並びの箇所で響きをそろえたり、語末を「て」でそろえたり、高めのロングトーンの箇所は開口音にしたり、クロスワード感覚であらかじめその音符にのせたい「あいうえお」にアタりをつけてから、あてはまる言葉をはめる感じで。文章としてのまとまりを維持しつつ、あのとき思いつく限りのやり方で書いてみました。それを評価していただけたことでやり方のフォーマットがひとつ定着した……という意味で、「勇気が君を待ってる」は“歌詞を書けるようにさせてもらった曲”なんです。「自分で何か見つけなきゃ」と思っていたなかで、やり方をひとつ見つけられたことが、本当に嬉しかったです。

――ちなみに、先ほど名前が出た畑さんは、Motokiyoさんが作編曲された「トキメキコレクター」(アニメ『ミュークルドリーミー』EDテーマ)の作詞も手掛けられています。

Motokiyo 譜面をお送りしたらそこに畑さん直筆の歌詞入り譜面が戻ってきて。「おぉ……!」となりました。畑さんは、作詞の分野で田中秀和さんと同じように、勝手にリスペクトしている方であり……研究対象なんです(笑)。だから歌詞を書いてもらえたことは、やっぱり嬉しかったです。

――1年間毎週流れていたわけですから、毎週観て曲を聴いていたちっちゃい子も……僕みたいな大きなお友達もいると思います(笑)。

Motokiyo あははは(笑)。自分も『おねがいマイメロディ』とか『ジュエルペット』を観たりもしていたので、あのとき観てくれた子供たちが10年・20年ぐらい経って「自分の世代のアニメだ」と認識してくれるぐらいになった頃に、「あの曲懐かしいなぁ」みたいに言ってもらえたらいいなって思います。

――こうしてこれまでを振り返っていただいたなかで、改めて楽曲のテイストとしても主題歌を提供されたアニメ作品としても、非常に幅広く活躍されていると感じました。そんなMotokiyoさんが、今後の音楽作家として挑戦したいことはありますか?

Motokiyo ちょっとズルい返しになってしまうかもしれないんですが……まずは何より「音楽のお仕事を続けていくこと」ですね。最近だとぼんやりと「VTuberさんの楽曲とかもっと書いてみたいな」とか思ったりもするんですけど、特に縛りはなくて。

――まずは、ご自分のスタイルを固めていきたいというか。

Motokiyo そうですね。ただ、自分なりに器用になれたらとは思います。良いのか悪いのかはわからないんですが、「主題歌感が強すぎて、アルバムやカップリング曲で使いにくいのかな」とかは思うこともありますし、自分でも結構偏りがあるように感じてもいるんです。「それもまた、良さなのかな?」と、悩んでいるところではあるんですけど、ありていですが「バズるような曲を書いてみたい」という気持ちはあるかもしれません。

――主題歌のような曲とは違った意味で個性の際立つ、印象に残る曲というか。 Motokiyo そうですね。それを理解できるようになったときに、また作れる曲の幅を広げていけるのかな、とは思います。

Profile

Motokiyo。キャッチーで綺麗なメロディーと、品のなる「キラッ」としたアレンジを得意とする。自身もJPOP,アニメソングを好んで聴いている。中学3年生の時、ギターに初めて触れ、その後、独学で作曲、作詞をするようになり、高校1年生の時、ベース担当としてバンド活動。この頃からDAWを用いた楽曲制作を行うようになる。日本工学院専門学校芸術専攻課程ミュージックアーティスト科で音楽理論 を学び、2016年3月に卒業。在学中に作曲をしたTVアニメ「三者三葉」のED曲「ぐーちょきパレード」が採用され作家デビュー。同年9月にはオトナの土ドラ『ノンママ白書』の主題歌でCrystal Kayが歌う「Lovin’ You」を共同編曲を担当して、着実にキャリアを積み上げている。

インタビュアーProfile

須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。
Twitter:@sunaken

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