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菊谷知樹パーソナル・インタビュー【第4回】アニメ主題歌の制作秘話・作家として挑戦したい音楽

全4回に分けて掲載中の、弊社所属の菊谷知樹へのパーソナル・インタビュー。そのラストとなる今回は、現在放送中のTVアニメ『うらみちお兄さん』をはじめとする、アニメ主題歌についての話題を中心にお届けします。そのなかで菊谷が語る、自身が得意としていると感じている手法とは……?

菊谷知樹 パーソナル・インタビュー【第4回】

――第4回はまず、現在放送中のTVアニメ『うらみちお兄さん』の楽曲のお話からお聞きできればと思います。まずは作編曲を手掛けられたOPテーマ「ABC体操」なのですが、どのように作られていったのでしょう?

菊谷 この曲はまず初めての打合せのときに、原作の久世岳先生がマンガにはない部分の歌詞も書いて持ってこられたんですよ。それはめちゃくちゃ面白かったんですけど、全部曲にしようとすると6分ぐらいになっちゃいそうだったので、ピックアップさせていただいて今の形ができたんです。

――詞先だったんですか?

菊谷 はい。『うらみちお兄さん』は全部詞先です。

――きょう日、詞先は珍しいように思うのですが……。

菊谷 僕、詞先は得意なんですよ。それに、最近詞先の仕事が多いんですよね。それこそ『妖怪ウォッチ』とか『イナズマイレブン』の最近の曲とか。個人的には、そのほうがやりやすいんですよね。

――ちなみに制作のなかで、特に大事にされたことは?

菊谷 やっぱりOPなので、キャッチーさは大事にしました。あと久世先生が「子供番組のOPでありながら、ちょっとアニソンっぽさも欲しいな」とおっしゃっていた記憶がありまして。それも自分の中で消化して、ああいう形になりました。

――その他、劇中歌として『ママンとトゥギャザー』の中で歌われる曲や挿入歌についても、菊谷さんが作編曲を手掛けられています。特に劇中歌については「子供向け番組で流れている」という設定でありながら、実際の作品の視聴者層は大人が中心なので、普通に子供向け作品の楽曲を作るのとは違ったバランスを意識しなければいけない部分もあるように思ったのですが。

菊谷 「子供向け番組で歌われる曲」ということは聞いていたんですが……たとえば2話で流れた「傘持ってないときに限って雨降るのなんで」も、久世先生を含めた打合せで「演歌とかでもいいんですかね?」って言ったら「全然アリじゃないですか!?」と言ってくださったので、「あ、もう別になんでもいいのかな」と思って(笑)。だから、そんなにジャンルに囚われてはいないです。逆に『ママンとトゥギャザー』のコンサートで歌っているという場面がわかっていた「得手不得手」は、それっぽい曲にして。そうすると曲は自然と子供テイストになるんですが、歌詞が変わった感じなので、自然と闇が訪れるんです(笑)。だからあまり僕がコントロールしたということはなくて、結構自由に作っていった感じはありますね。

――打合せのなかで決まったオーダーなどは踏まえつつ、でもある程度自由に。

菊谷 はい。「これは、こういう曲調にしてください!」というのはほとんどなくて、自由なほうが多かった気がします。

――また、菊谷さんは先ほど名前の挙がった『イナズマイレブン』や『妖怪ウォッチ』のような、本当にお子さんに向けた作品でも多数楽曲を手掛けられています。逆にそういった楽曲では、どんな点にこだわられていますか?

菊谷 やっぱり、あまり難しくならないようにはしていますね。なんか急に音がビヨーンって飛んだり、ガチャーンって転調したり……そういうのはいらないな、とは思っています。あと『妖怪ウォッチ』はだいたい詞先なので、作詞の方と話し合って少し歌詞を削ってもらったりしつつ、あまりごちゃーっとしないようにもしています。

――最近の深夜アニメでよく主題歌になる、テンポが速くて言葉が詰まっているようなものではなく、聴き取りやすくというか。

菊谷 ですかね。あと『妖怪ウォッチ』に関しては歌う人が決まっているので、それぞれがどういうふうに歌うのかを想定しながら書きます。たとえば「男性のボーカリストの方は、ここのレンジがいちばんおいしい」とか「女性のほうはちょっと低めのほうが色っぽさが出る」というところを意識して……だから『妖怪ウォッチ』の曲は割と制約があるなかで作っているんですけど、逆にそれを楽しみにしているようなところはあります。

――詞先というところも含めて、制約を楽しまれている。

菊谷 制約はね、あればあるほど燃えますよね。これはたぶん「小編成が得意」っていうのにも通じるんですけど……たとえば楽器3つだけで曲を作るとなると、すごく制約があるけど、そこに楽しさを感じるというか。昔『MOTHER』っていうゲームがあったんですけど、あの音楽がすごくよくて。ファミコンのゲームだったから、音数的にはむちゃくちゃ制約があるのに、今聴いてもすごいなぁ……って思ってついつい聴いちゃいますもん(笑)。

――そういう制約の多かった時代のゲーム音楽に親しまれていたというのも、もしかしたら今につながっているかもしれませんね。

菊谷 あー、あるでしょうね。僕がいちばんはじめにゲームセンターでやり込んだのが『サーカス』っていう、シーソーで人をポーンって跳ね上げてバルーンを割るゲームで、『インベーダーゲーム』のさらに昔のものなんですよ。それぐらい前なのに、あのゲームの曲って、僕は今でも歌える。そういうふうに無駄なものを削ぎ落とした、エッセンシャルなものだけを抽出して構築した音楽も、素敵だなと思います。

――ではやはり、今後作家として挑戦していきたいことは、そういった要素のある音楽になるのでしょうか?

菊谷 そういうとこなんですけど……具体的には、たとえば映画音楽的なサウンドトラック。それもハリウッド的な壮大なものではなくて、すごく音数は少ないけど作品の中で際立って、印象に残るような音楽……というものを目指したら、いいの作るんじゃないかなって自分でも思っています(笑)。

――それは映画はもちろん、アニメでも活かせる作品やオーダーがあるかもしれませんね。

菊谷 あー、いいですね。……あ、それで言うと『ひだまりスケッチ』の音楽って本当に音数が少なくて、実は趣味丸出しというか。やりたいことをそのままスルスルスルっとやれちゃったようなところがあったんです。ただ、当時はさっき言ったように勉強中だったところもあるので、「今やらせたら、もっといいのできるんじゃない?」みたいな想いもあるんですよ。なのでもう1回、そういう趣味丸出しの劇伴もやってみたいですね。

菊谷知樹Profile

菊谷知樹(きくやともき)。1968年2月21日生まれ、東京都出身。1992年、「ムスタングA.K.A」でソニーレコードよりデビュー。解散後ギタリストとして、05年よりコンポーザーとして作曲・編曲を中心に活動中。近年はアニメの劇伴やCMなどのBGM作品にも定評がある。ギターサウンドからストリングス、ブラスサウンドをはじめ、自らマンドリン、ウクレレ、三線、鉄琴など幅広い楽器演奏もこなす。現在、OP主題歌を担当したアニメ「うらみちお兄さん」、劇伴を担当したアニメ「チート薬師のスローライフ」アニメ「女神寮の寮母くん。」が放送中。

関連ページ: 菊谷知樹(関連作品・実績等)

インタビュアーProfile

須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。
Twitter:@sunaken

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