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菊谷知樹パーソナル・インタビュー【第2回】~作家としての転機、劇伴への取り組み

全4回に分けて掲載中の、弊社所属の菊谷知樹へのパーソナル・インタビュー。第2回となる今回は作家としての転機や制作におけるルーティーンや気分転換の方法など、活動を始めてからのエピソードを中心に語ってもらっています。

菊谷知樹 パーソナルインタビュー【第2回】

――今回はまず、作家として活動をされていくなかで、ターニングポイントだと思われている出来事からお聞きしたいのですが。

菊谷 いちばんは、『となグラ!』というアニメで初めて劇伴の仕事をやらせてもらうことになったときでしょうか? 今まではロックバンドしかやっていなくて、コードについて多少知っていてもちゃんと勉強をしていたわけではなかった。だから劇伴の仕事をするようになったときに、改めてクラシカルな理論を習ったんです。それがひとつ、変わったポイントではあると思います。

――菊谷さんは劇伴などでストリングスを使われることが多い印象があるのですが、ストリングスを用いられる際にはこだわりもあるのでしょうか?

菊谷 そうだなぁ……元々僕、弦は大好きなんですよ。なぜ大好きなのかというと、ビートルズの弦が好きだから。その弦がどういうふうに鳴っているのかもあまりわかっていない頃から、ずっと好きで。少し勉強してみたことで、やっと「こういうことなのかな?」ということがわかってきた……という感じなんです。だからこれはこだわりというか理想に近いかもしれないんですけど、要するにビートルズ、ジョージ・マーティンみたいな弦を書きたいなと思っています。

――その理想像を頭に置きながら、作品の雰囲気やメニューのオーダーに合わせてそれぞれ突き詰められていくというか。

菊谷 あ、そうですね。その作品によって、やらなきゃいけないことっていろいろあって。毎回毎回、切羽詰まって一生懸命分析してそれに追いついていく……というか(笑)。本当に申し訳ないんですけど、勉強しながらやらせてもらっているような感じがずーっと続いている感覚です。

――それはきっと、ご自身の中の理想とのギャップを埋めるための向上心が尽きていないからなのでは?

菊谷 なるほど、向上心……そう言うと、聞こえはいいかもしれないですね(笑)。でも自分としては、本当に切羽詰まってやっているだけという感覚なんです。だけどそのなかで「もしかしてこれ、できたんじゃないか?」と思ったときって、音がスーッと体に入ってくるような感じがします。

――菊谷さんが劇伴を手掛けられている作品は日常モノや、設定的にファンタジーの要素があっても日常と地続きなものが多い印象があります。そのなかでストリングスやアコースティックなサウンドを多く使われている印象があるのですが、そういった作風も意識しての選択なのでしょうか?

菊谷 アコギとか小編成のほうが得意で、迷いなく作れる感覚もあるので自然とそうなっていっているような気がしています。ただやっぱり、オーダーの中にはバトル曲とか、ドーン!と音大きめな曲もあって。そういうものは未だに苦労しますね。そもそも性格的にあまりバトルが好きじゃないというか、「いけいけいけ!」っていう精神性があまりないので……(笑)。ただ、バトル曲を書くときも、まずはいろんなバトル的な曲を参考に聴いて研究するんですよ。「こういう要素があると、バトルっぽく聴こえるんだな」とか「かっこいいな」と思えるエッセンスを分析してから、取り組んだりしています。

――ちなみに、そういう曲を書く際に気持ちを切り替えるために、何かすることはあるんですか?

菊谷 バトル曲のためにスイッチオンするとかはないですんけど……だいたい気分転換のために、オフは釣りか散歩をするか、あとは『5時に夢中!』を観ます。

――そうなんですか(笑)。

菊谷 釣りは、最近はずーっと船で東京湾とか相模湾まで海釣りに行っていて……今年始めたのはイカですね。マルイカっていう、ケンサキイカのちっちゃいやつなんですけど。

――釣りや散歩は、やはり気分転換としてすごく有効ですか?

菊谷 有効ですね。あと『5時に夢中!』があると、「5時までにこれを終わらせよう」という気持ちにもなりますし。土日は『5時に夢中!』がないので、土曜は夕方5時半からのテレビ東京の釣り番組を、日曜日はBSで5時から始まる釣り番組をそれぞれリミットにしています(笑)。

――ということは、作業開始は逆に早めの時間帯に?

菊谷 いや、10時過ぎぐらいですかね。これは『じゅん散歩』を見てからなんですけど(笑)。現場がないときは、本当に規則正しい生活をしていると思いますよ。

――その間にちょっと詰まったなと感じたときには、近場に散歩に行かれて切り替えたり。

菊谷 いや、散歩は『5時に夢中!』のあとですね。だいたいはradikoで、『JUNK』とか『ザ・ラジオショー』を聴きながら。

――タイムシフトを活用して(笑)。

菊谷 歩きながら聴くのが、いちばん楽しいですよね。散歩しながら仕事のこともいろいろ考えているので、完全な気分転換ではないと思うんですけど。それに、意外と歩きながらのほうが、物事の解決法がよく浮かぶんです。特にリテイクの要請があったときって、言われた瞬間は「な、なにを言ってんだろう?」となるんですけど、散歩しながら考えていると「そういうことかな?」とか「この手でいけばいいんじゃないかな」みたいに考えがまとまることが多いんですよ。

第3回は歌モノ楽曲についてのエピソードをピックアップ。今回同様にターニングポイントだと考えている出来事や、タッグを組むアーティストについて語ってもらいました。次回もどうぞ、お楽しみに!

菊谷知樹Profile

菊谷知樹(きくやともき)。1968年2月21日生まれ、東京都出身。1992年、「ムスタングA.K.A」でソニーレコードよりデビュー。解散後ギタリストとして、05年よりコンポーザーとして作曲・編曲を中心に活動中。近年はアニメの劇伴やCMなどのBGM作品にも定評がある。ギターサウンドからストリングス、ブラスサウンドをはじめ、自らマンドリン、ウクレレ、三線、鉄琴など幅広い楽器演奏もこなす。現在、OP主題歌を担当したアニメ「うらみちお兄さん」、劇伴を担当したアニメ「チート薬師のスローライフ」アニメ「女神寮の寮母くん。」が放送中

インタビュアーProfile

須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。

・Twitter:@sunaken